「大学の教員等の任期に関する法律案」の
       閣議決定・国会提出に抗議し、廃案を求める
政府は4月8日、大学教員に任期制を適用するための法律案を、閣議での決定を経て、
ただちに国会へ上程しました。
 任期制の導入を求めた昨年10月の大学審議会答申以降、大学における研究・教育
の発展の視点から、また、憲法・教育基本法および現行の労働・公務員法制に抵触す
る可能性など、幾多の根本的な問題点が指摘され、性急な法制化に反対する声が広が
ってきていました。私たちも加わって、去る3月3日、県内4大学、14名の呼びか
け人の提起に370名余の賛同を得て「大学教員の任期制の法制化に反対する鹿児島
県大学人の声明」を発表し、教員の身分を原則的に「期限付き雇用」という形態に変
える今回の施策に懸念を表明したところです。
 答申に至る過程でも、国立大学協会、私立大学団体連合会、さらに大学基準協会な
どから、学問研究の自由を尊重するという視点の欠落や、教員の身分保障が不安定な
ものになった場合の人材難、さらに長期的な視野を必要とする学術文化の発展への支
障といった懸念や批判が相次ぎ、慎重な審議を要望する声が広がっていました。こう
した各方面からの疑問や主張を全く顧みずに法制化が強行されようとしていることに
ついて、私たちは政府の姿勢をきびしく批判せざるを得ません。
 今回提出された法案では、任期制が該当するものを、(1)先端的、学際的または
総合的な教育研究が行われる組織などにおいて、多様な人材が求められる場合、(2)
自ら研究目標を定めて研究を行う助手、(3)特定の計画に基づき期間を定めて教育
研究を行う場合の3種類に限定しています(第4条)。しかし、後の二者にくらべて
第1号の規定は例示された特性が抽象的で、解釈もまたかなり恣意的になし得る余地
をもったものになっています。大学審答申の特徴だった、すべての大学教員を対象に、
一定の期間、すなわち任期満了のたびに再任するか否かを審査しようという考え方が、
このたびの法案に色濃く反映したことが指摘できるでしょう。
 このような制度のもとでは、継続性と計画性を必要とする、学生の個性に応じた教
育や、将来を担う若手研究者の成長はもとより、中長期的視野にもとづく独創的で萌
芽的な研究もまた困難になることは、火をみるよりも明らかです。雇用期限や審査を
たえず意識させられることによって、研究テーマの設定や研究計画の構築、ひいては
研究の質的な水準などにまで影響が及ぶことは必至です。任期満了時の審査に関して、
「公正な基準やプロセス」についての議論を欠いたままでは、かえって一面的で恣意
的な業績評価がまかり通る可能性も大きく、教育・研究を活性化させるどころか、真
理追究の場としての大学を荒廃させるきっかけともなりかねないのではないでしょう
か。
 大学教員の身分保障の根拠のひとつは憲法23条の「学問の自由」にあり、教育基
本法や教育公務員特例法によって、教員の適正な待遇の必要をうたっているのは、職
責の遂行と学問・研究の自由、そして大学の自治が不可分の関係にある重要なものと
考えられてきたからでもあります。さらに、近々ユネスコでは「高等教育教職員の地
位に関する勧告」が採択される予定で、そこでは、学問の自由と「在職権」など雇用
の継続性の関係の重要性がとくにうたわれると言われています。まさにこの時期の政
府・文部省による法制化の強行は、こうした国際的な動向にも逆行する、見識を欠い
た不当なものと言うべきでしょう。
 私たちは以上の懸念や疑問から、任期制導入を急ぐ政府の姿勢および今回の法案を
断じて容認することはできません。政府に対しては同法案の撤回を求めるとともに、
国会においては、十分に審議の上、問題点を広く国民の前に明らかにした上で明確に
廃案とするよう強く求めるものです。
1997年4月30日
                      鹿児島大学教職員組合
                      日本科学者会議鹿児島支部