声明 「任期制」の導入・法制化に反対する
 大学審議会は、一昨年9月同審議会組織運営部会が発表した審議の概要に基づい
て、昨年10月29日、「大学教員の任期制について 大学における教育研究の活
性化のために」を文部大臣に答申しました。昨年7月閣議決定された科学技術基本
計画が、科学技術基本法の規定をも逸脱して国立試験研究機関の研究者に任期制を
導入するとし、大学については大学審議会の検討をまつとしたのに呼応するもので、
国公私立大学の全教員を対象とした任期制(選択的)を導入しようとするものです。
今国会では、国立試験研究機関研究者と大学教員に任期制を導入するための一括法
案が提出される予定であり、1997年度予算案では、任期制導入促進のための予
算措置がとられています。
 日本科学者会議常任幹事会は既に昨年6月、政府の科学技術基本計画策定を前に
して、現在その導入が図られている研究者・教員に対する任期制には反対であると
決議しています。任期制という新しい人事管理、研究管理をテコにして、我が国の
科学技術の発展方向が財界の意に沿った方向に歪められるおそれのあること、研究
者に対する任期制が、公務員関連法制、労働関係法制等の改悪を通して、我が国で
慣行となっている雇用形態に重大な影響をもたらす恐れのあること、そして、真に
科学・技術の創造的発展にとっては、研究者、研究支援者の増員と経常研究費の抜
本的な増額を含む貧困、劣悪な研究・教育環境の整備充実こそ緊急の施策であるこ
と、などが考えられるからです。
 平和をめざし、真に国民のための創造的な教育・研究を推進し発展させるために
は、自主的な教育・研究活動、教育・研究組織の民主的な運営、成果の公開の自由
などが必須です。しかしながら、今回の大学教員への任期制の導入・法制化は、学
長等の指導性の強化、教授会の代議制等と相俟って、「評価」をテコに教育・研究
活動への強権的な管理統制をもたらすとともに、憲法第23条に保障された「学問
の自由」、加えてその制度的保障としての「大学の自治」、「大学教員の身分保障」
を侵害するおそれがあります。さらに私立大学では、「『教育・研究の活性化』の
ための『教員の流動化』」の名のもとに、教員の雇用経費を圧縮するとともに、身
分を不安定にする危惧がきわめて大きいと考えられます。
 国立大学協会は、academic freedom の重要性を強調し、任期制の導入に慎重さ
を要請しています。全国大学高専教職員組合、日本私立大学教職員組合連合も大学
教員への任期制の導入・法制化に反対しています。1月20日に出された「大学教
員の任期制に反対しよう」とのアピールでは、学長、学長経験者、各大学名誉教授
など150余名の人々により反対意思が示されました。その他多くの大学関係者が
反対な意思懸念を表明しています。このような多数の大学人の声を無視して、大学
審議会は、「大学教員への任期制」答申を一方的に行い、政府・文部省は、その法
制化を強行しようとしているのです。
 日本科学者会議は、研究者・教員への「任期制」導入とその法制化の担う危険な
役割を憂慮し、ここにあらためて反対の意思を表明するものです。
1997年2月4日
                              日本科学者会議