大学教員の任期制に反対する
              1996年11月21日 千葉大学教職員組合執行委員会
 大学審議会は10月29日に「大学教員の任期制について」と題する答申を行なった。
答申は、大学における教育研究の「活性化」のために教員の「流動性」を高めること
が必要であり、その方策として任期制の導入が有効であるという。
 しかしながら任期制は、現在の大学のかかえる問題を解決するどころか、逆に研究
と教育のさらなる貧困化を招くものである。私たちは、いかなる形の任期制をも決し
て容認することができない。
 現在の大学における研究と教育が、十分に行なわれているとは私たちも思っていな
い。予算と人員が貧困なままで、大学改革の名のもとに課せられる仕事が増える一方
であり、近年、大学教員の多忙化は著しい。
 このうえに任期制が導入されれば、短期間に成果があがるような研究テーマを選ぶ
ようになり、基礎的な研究や長期的な展望のもとでの研究はおろそかになりかねない
。いたずらに競争原理を導入し、表面上の「活性化」を追い求める先には、研究と教
育の枯渇が待っている。
 研究費と定員の充実により、ゆとりある環境を整備することこそ、独創的な研究成
果を生み出し、すぐれた人材を育成する唯一の道なのである。
 答申は大学教員の「流動性」を重視する。だれしも、自分の研究内容に見合った設
備やフィールドのある環境へ移りたいものである。しかし、現状では研究・教育条件
に関する大学間格差が存在し、あえて条件の悪い大学へ移ろうとするものはいない。
 大学間格差が解消されれば、対等な人事交流が増えることだろう。しかしそれは、
あくまでも結果であり、「流動化」それ自体を自己目的化して任期制を導入するのは
本末転倒である。なお、わが国の貧困な住宅事情も人事交流の障害となっていること
を付け加えておく。
 答申は、「選択的任期制」が適切であるという。これは、任期制を導入するか否か
、また、どの職種に導入するかを、各大学の判断にゆだねるというものである。しか
し、これまでの大学政策からみて、新しい組織や定員の要求に際して任期制の導入が
付帯条件とされかねない。そうなると「選択的任期制」も有名無実となる。
 任期制導入の理由のひとつとして、答申は「いったん教員に採用された後は、業績
評価がなされないまま、年功序列的な人事が行われ」ているという。実際はそうでは
なく、助手をはじめ若手教員に対しては、昇任の際に業績審査が行なわれている。そ
れにもかかわらず、答申は「特に、若手教員の育成の観点から、助手への任期制の導
入は重要である」という。若手の育成のためというよりも、むしろ、若手の使い捨て
のための任期制といわざるを得ない。
 答申は、任期制の導入にあたって「公務員関連法制や労働関係法制等との関係」に
ついて「所要の措置を講じることが必要である」という。すなわち、任期制は現行の
労働法制に抵触するものであり、ひとたび任期制導入のために関連法制が改悪されれ
ば、これは他の公務員、そして民間労働者へと波及しかねない。私たちは労働者の人
権を守る立場からも、任期制の導入に反対する。
 千葉大学では、当局が各部局に対して任期制に関するアンケートを実施した。その
結果は反対意見が多数で、賛成意見もほとんどが条件付きであった。丸山工作学長は
6月の評議会で、「本学においては現時点では任期制を採用しない」との見解を表明
された。
 さらに10月の本組合との会見においても、学長は「若いうちに自主的にいろいろ渡
り歩くのはよいと思うが、制度として縛るのは研究・教育に悪い影響の方が大きい」
と述べられた。
 私たちは、学長の見識に敬意を表し、この姿勢を堅持されることを希望する。私た
ちもまた、任期制を許さないたたかいに全力をつくす所存である。
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