大学教員の「任期制」法制化に反対し、
    教育・研究条件の充実を求める愛知教育大学教員アピール
                           1997年3月11日
 
 大学審議会は昨年10月、大学教員への任期制導入を柱とする「大学教員の任期制に
ついて」を答申し、これを受けて文部省は「任期制」実施のための法制面の整備を含
む特別立法を、現在開会中の国会に提出する状況にある。大学審議会の答申では、導
入の理由として、教育・研究の「活性化」を図り、教員の「流動性」を高めることを
あげている。
 しかし、教育・研究を前進させるためには、大学教員からの要求が強いサバティカ
ル制度や大学間の教員交流制度の導入などが必要であり、何よりも、教職員の増員と
施設設備の充実および恒常的研究費及び研究旅費の増額と、大学におけるよりよい教
育システムを構築するための機構改革やカリキュラム改革に関する自主的努力を尊重
することこそが、大学の教育・研究を真に発展させる最善の道であることを強く訴え
るものである。
 
 この20年間、愛知教育大学における教員一人当たりの研究費は、ほとんど横ばいの
状況であり、経常的経費を差し引くと実際に研究に使える費用はきわめて乏しく、研
究交流のための旅費にいたっては学会出席一回分に過ぎない。そして、各教員は90分
の授業を平均で一週あたり6回も行っており、その合間をぬってわずかな研究時間を
確保している有り様である。また、8次にわたる定員削減によって、事務系職員は約2
5%も削減され、労働は多様化・過密化し、大学をとりまく教育研究支援体制が急激
に悪化しつつある。
 「任期制」の導入は、こうした劣悪な状況を放置したままで、大学教員の間に短絡
的に競争原理を持ち込み、いたずらに論文数や著作数を競わせる「業績主義」を煽る
ものでしかない。また「任期制」は、数年間の研究成果の評価によって運用されるた
め、長期に継続してはじめて成果があがるような研究を切り捨てるものである。「任
期制」法制化は、「学問・研究の自由」「大学の自治」を形骸化させ、大学教員の教
育活動への取り組みを弱体化させるものである。この結果、「学術の中心として、広
く知識を授ける」大学の機能が著しく損なわれることになり、「任期制」法制化は到
底容認できない。
 「再任」の手続きは「採用」の手続きと同等と「答申」で明記していることからも
、実質的には「任期制」が「期限付き雇用」後の「再任不可=解雇」につながるもの
である。職業としての教員の身分が不安定になり、長期的生活設計が出来なくなるな
ど市民的生活の基盤すらも奪うものである。本「任期制」が、小・中・高などの教員
や公務員、ひいては民間企業への数年間の「期限付き雇用」導入の露払いの役割を担
っていることも決して看過出来ないことである。
 私たちは、愛知教育大学の教員として、以上の理由から大学教員への「任期制」の
導入とその法制化に強く反対するとともに、その危険な内容を広く学内外にアピール
するものである。
賛同署名者数 全教員301名中220名(1997年3月11日現在)
  内 氏名公表可とする者 175名(50音順)
      
青嶋  敏(民法学)   阿形 健司(教育社会学) 浅野 和生(西洋美術史)
荒井 保治(独文学)   有田 節子(日本語学)  安藤 重和(日本古典文学)
池田 義昭(解析学)   石川 宗雄(物理化学)  石黒 宣俊(中国近代思想)
石戸谷公直(位相幾何学) 石原 伸哉(公衆衛生学) 石丸  博(政治社会学) 
磯部 洋司(美術科教育) 市橋 正一(園芸学)   伊東 良郎(細胞学)   
稲毛 正彦(無機化学)  今井正之助(日本古典文学)岩井 勇児(教育心理学) 
岩崎 公弥(歴史地理学) 岩松 鷹司(発生生物学) 植村 英明(確率論)   
魚住 忠久(社会科教育) 牛田 憲行(素粒子物理学)有働  裕(国語科教育) 
宇納 一公(彫刻)    梅澤由紀子(音楽教育学) 梅下 隆芳(経済政策論) 
浦田 敏夫(解析学)   浦野 隼臣(地球化学)  遠藤  透(鋳金制作)  
大沢 秀介(英米哲学)  太田 弘一(園芸栽培学) 太田  稔(数学基礎論)
大西 研治(機械工学)  大西 友信(民族音楽学) 大村  恵(社会教育学)  
大和田道雄(大気環境学) 岡出 美則(体育科教育) 小笠原節夫(人口地理学)
岡本  勝(日本近世文学)小川 秀夫(情報工学)  尾崎 俊介(米文学)   
折出 健二(生活指導学) 甲斐 健人(体育社会学) 春日 規克(運動生理学) 
加藤 祥子(被服構成学) 加藤 正義(機械工学)  金森 正臣(動物生態学) 
金光 三男(代数学)   川口  杲(デザイン学) 北野 英己(遺伝育種学)
木村 博昭(中国書道史) 清田 雄治(憲法学)   日下部信幸(被服学)   
久野 陽一(英文学)   栗原 一身(器楽)    黒川 建一(保育内容論) 
劔持  淑(英米文学)  小泉  直(英語学)   小竹  聡(憲法学)
児玉 康一(素粒子物理学)小寺 平治(数学基礎論) 小西 英之(物理化学)  
子安  潤(教育方法学) 近藤 潤三(独政治史)  斉藤 秀平(社会教育学) 
斎藤  眞(臨床心理学) 坂田 利弘(公衆衛生学) 佐古井貞行(消費社会学)
佐々木守寿(応用数学)  佐藤  彰(建築史学)  佐藤 勝利(臨床心理学) 
佐藤  豊(中国哲学)  佐藤 洋一(物性物理学) 佐野 竹彦(知能心理学) 
澤  武文(天文学)   澤  正実(発生学)   澤田 徹郎(社会学)
寺中 久男(物性論)   渋谷 克美(西洋哲学史) 清水 秀己(電気工学)  
清水 秀美(教育心理学) 新行 紀一(日本中世史) 新山王政和(音楽科教育) 
菅沼 教生(植物生理学) 杉浦  孜(地球化学)  鈴木  剛(教育哲学)  
鈴木 英樹(運動生理学) 鈴木 眞雄(教育心理学) 鈴木 将史(確率論)   
住友 陽文(日本現代史) 芹澤 俊介(植物分類学) 鷹巣  純(美術史)   
高橋 丈司(教育心理学) 高橋 裕子(保健教育)  田口 尚之(中古文学)  
竹内 謙彰(発達心理学) 竹内登規夫(職業指導)  田平  誠(気象学)   
辻村 真貴(水門学)   土屋 武志(社会科教育) 筒井清次郎(体育心理学) 
塘  耕次(中国哲学)  坪井 由実(教育行政学) 寺本  潔(地理教育)  
遠西 昭壽(理科教育)  鴇田 信男(西洋音楽史) 道木 一弘(英文学)   
永井 輝雄(教育制度学) 中川 洋子(声楽)    中島 清彦(錯体化学)  
中田 敏夫(社会言語学) 中田 直宏(作曲)    中津 楢男(情報工学)
中野 靖彦(教育心理学) 中村喜美子(家庭看護学) 中村 正廣(米文学)
永冶日出雄(比較文化論) 仲山 進作(美術鋳造)  長井 茂明(被服材料学) 
長沼  健(分析化学)  西宮 秀紀(日本古代史) 西村 敬子(食物学)   
丹羽 晧夫(美術教育)  沼田  隆(宗教学)   野沢 博行(銅版画)   
野地 恒有(日本民族学) 野田満智子(生活科学教育)野田三喜男(応用物性)  
橋本  到(統計力学)  橋本 尚美(家庭科教育) 羽渕 脩躬(生化学)   
林  剛一(声楽)    林   誠(代数学)   早瀬 和利(栄養学)   
原口 芳明(臨床心理学) 樋口 一成(工芸教育)  久田 晴則(英文学)   
平田 賢一(教育情報学) 福田 雅一(分子生物学) 藤井 浩之(教育方法学) 
藤江  充(美術教育)  藤本  博(国際政治学) 舩尾日出志(社会科教育)
堀内久美子(養護教諭論) 前田  勉(日本思想史) 松下  淑(特殊教育学) 
松田  猛(金属物理学) 松田 正久(素粒子論)  三浦 浩治(表面物理学) 
見崎 恵子(西洋経済史) 水谷 俊二(声楽)    南  守夫(独現代文学)
南  曜子(音楽教育)  三宅  明(岩石学)   三宅 正彦(日本思想史) 
村岡 眞澄(体育学)   目黒 克彦(中国近代史) 森重 義彰(ロシア教育史)
森山 昭雄(自然地理学) 矢崎 太一(低温物理学) 安武 知子(理論言語学) 
安本 太一(計算機科学) 山口  匡(教育哲学)  山下  茂(独文学)   
山田  綾(家庭科教育) 山中 哲夫(仏文学)   山根 真理(家族社会学)
横山 信幸(国語教育)  吉岡 恒生(教育心理学) 吉田 正信(日本近代文学)
渡邊 和靖(日本思想史) 渡邊 籐逸(確率論)   渡邊 雅弘(政治思想史)
Suzan Collins(英語学)