2021.7.16 東京オリンピック中止の声明

「東京2020オリンピック競技大会」は政府・都の責任で今からでも中止すべきであることを訴えます(声明)

2021年7月16日
東京地区大学教職員組合協議会(都大教)

7月8日、東京都内への緊急事態宣言の再発令(7月12日から)とともに、「東京2020オリンピック競技大会」(以下「五輪」といいます)の東京都内及び近県での競技及び開閉会式をすべて無観客開催とすることが決定されました。
 しかし、無観客とはいえ、このまま五輪を開催することは理性的な判断といえるのでしょうか。

コロナワクチンの接種が人口の過半数に及んでいるヨーロッパ諸国ですら、最近になって主として変異株による急速な感染拡大が引き起こされています。その中で開かれたG7サミットやサッカーの欧州選手権などのイベントは、大規模な感染拡大をもたらしました。ワクチンの国際的分配が公平になされない中で、アフリカ諸国では第三波の感染拡大がこれまでにない規模で加速しつつあり、WHOが警告を発しています。
このような状況下で、世界中から選手団、その他報道などの関係者を集めて五輪を開催することは、世界的パンデミックとのたたかいに致命的な悪影響をもたらすおそれが否定できません。
7月に入り、選手団、その他関係者はすでに続々来日してきています。日本側による入国時のいわゆる「水際措置」や入国後の五輪関係者以外との接触を防止する措置について、既にその綻びがあらわになっています。滞在地へ移動後に感染が判明した選手や、選手らに応対する日本側スタッフの感染なども既に判明しています。感染予防対策が不十分であるとして、外国選手団側が抗議する状況も生じています。
 こうした中で五輪の開催を強行した場合、会期中に選手、関係者の間で感染拡大、クラスタが発生するおそれを全く排除できません。そうした場合、あるいは日本国内の感染状況により、五輪関係者に対する医療体制が保証できない状態になった場合は、開催途中で大会自体を中止したり、少なくとも一部の競技を中止したりせざるを得ない状況も起こり得ます。
そもそも、選手らの行動が制限される状況では、入国後、日本の盛夏の高温多湿な気候に対応した調整を充分に行うことも困難と思われ、選手らにとっては十全に力を発揮できないだけでなく、苛酷な気象条件下での競技実施による生命・健康への危険も通常以上に危惧されます。このような状況での五輪開催はアスリートファーストでは全くないと言うべきでしょう。

一方、日本国内の状況に目を転じても、専門家も指摘するとおり、パンデミック下で大規模な人的接触が生じる五輪を開催すること自体が「普通はない」ことです。感染防止のために行動変容を求められる状況が1年以上も続き人々のストレスが鬱積するなかで、五輪だけは例外的に認められる状況が「矛盾したメッセージ」と映り、行動変容への意識を弱める結果を招くのも当然のことです。
コロナ禍のもとで常に感染拡大による医療崩壊の危険性が指摘され、医療従事者の身体的・精神的負荷が限界に近づいています。数万人と言われるボランティアスタッフ、テロ対策などとして全国から集められる警察官など、無観客開催であっても、日本国内で大規模な人の移動や接触、また一部については選手、関係者などとの接触も避けられません。
 このように、国内の観客動員を行わない態勢であっても、五輪の開催自体が日本国内のコロナ感染拡大につながるリスクを生じるものでもあり、かつ、医療リソースを中心に、国内のコロナ抑制に割くべきリソースが五輪のために割かれてしまうことも全く避けられていません。

以上から、私たちは、直前ではあっても現時点で政府・都の責任により五輪中止を決断することこそが、国際社会のために、また選手らのために、そして国民・都民のために適切な理性的判断であると考えます。
 そのことを、開催都市で高等教育・学術に従事する者として衷心から訴えるものです。

 さらに私たちは、近年の商業主義的なオリンピックの在り方自体を見直すきっかけにすることを併せて問題提起し、幅広い議論を呼びかけるものです。

以上